瞑想世界251
魔境に病んだ村瀬の行方は?
田村が言う。
「いや、村瀬は狂っていたのではない。瞑想者に付き物の魔境に病んでいたのだ」
目新しい語句を耳にして、僕は田村に対して己の通信瞑想で質問した。
「魔境とは何だ?」
田村が答える。
「カオスの坩堝で散々俺達を悩ました騙し絵や恐怖のイメージの連鎖が魔境だ。村瀬はこの世そのものが魔境だと言っていたからな。田村はその魔境との闘いに病んでしまったのだと思う」
成美ちゃんが田村に対して質問した。
「それじゃ村瀬さんの異常とも言える性欲の氾濫は、その魔境との闘いのせいなのかしら?」
田村が答える。
「村瀬にとってはこの世の朝鮮人差別や理不尽そのものの集団虐め、虐待、パワハラ、セクハラ、騙し合い、陰口、誹謗中傷、貪欲塗れの人身売買、殺し合い等も全てが魔境と呼べるものだったに違いないと思う。そして」
僕は田村を促した。
「そして何だ?」
田村がおもむろに言った。
「そして村瀬は魔境を抜け、絶対死に足元を掬われることもなく、打ち勝ち、解脱して瞑想装置になったのだと思う」
僕は言った。
「だから成美ちゃんが遭遇した無数の村瀬には存在感が無いと言うか、心が無いのか?!」
田村が答えた。
「そう思う」




