瞑想世界239
パラレルワールドの死生観?
僕は再度論駁した。
「お前の言葉の意味がまるで伝わって来ない。もっと明確に厳密に論理を進めてくれないか。お前は人間存在も瞑想装置と同じく、複数としての単数存在であり、その中での無と有の同一性から生まれ変わりがなされ、それが死んだ母の同時創成、再生だと言いたいのか?」
成美ちゃんが言った。
「ごめんなさい。論理を言い返し、厳密に建て直しますね。私は人間存在を瞑想装置より劣った存在だとは言っていないのです。人間存在は瞑想装置の言わばベースとなる存在であり同率と措定出来るのです。人間存在は瞑想装置と同じように、多次元宇宙に在って複数としての単数存在であり、次元宇宙には同一の人間存在が同時多発的に無数にいて、それぞれが単一の意識を持って全く同じ人生を同じ時空間相で営み生きているのです」
僕は成美ちゃんの意見に論を添えた。
「パラレルワールドか?だから例えばこの星で、俺の母さんが一人死んでも、次元宇宙に無数にいる母さんの同一存在は生きていて、同じ人生を送っているから、厳密な意味での死は無いという事を言いたいのか?」
成美ちゃんが肯定した。
「そうなります」
僕は改まった口調で質問した。
「それは証明出来る事柄なのか?」
成美ちゃんが答えた。
「今あなたがいるこの現実が、あなたのもう一人のお母さんが生きている世界なのです」
僕は眉をひそめ言った。
「ちょっと待ってくれ。ここに俺の母さんがいて、それがもう一つの実在実存ならば、俺が母さんを殺したという因果律は消失するのか?」
成美ちゃんが答える。
「次元宇宙の狭間と言うか、壁を抜けると、一つの次元でなされた消滅は、異なる次元では生成としても捉らえられるわけです。言わば破壊は同時に創成となるのです。その破壊としての創成が次元の壁を抜け、在るが無いという同一の復元体を形成するのです」
僕は再度眉をひそめ反論した。
「つまり次元の狭間に在って、破壊は次元の壁を抜けると創成に繋がるという意味か?」
成美ちゃんが肯定した。
「破壊と創成は同一のものとして同時に在り、複数としての単数存在の無限連鎖的同一存在の証明は多次元宇宙の壁を跨いで表裏一体のものとして、一階から二階に昇っても一階にいるがごとし騙し絵さながらに、なされるわけです」
僕は論駁した。
「苦しい詭弁展開だな。在るが無いと言う曖昧な存在の証明は難解で難しく、そこに死生観を当て嵌めるのは厳密性を欠き、論理が破綻しそうではないか?」




