瞑想世界238
美しい心の結晶体としての瞑想装置とは?
拒んでも成美ちゃんは諦めない。
「あなたは瞑想装置として、新たなる創成の為の美しい破壊を成すべきなのよ」
僕は怒りを以って反論した。
「俺が母さんの住むこの地を滅ぼすわけが無い。この地には罪の無い子供達や病気に苦しむ老人達もいるのだぞ。そんな弱者を俺が残忍に滅ぼすわけがないではないか!」
成美ちゃんが答えた。
「あなたが田村さんと一緒に見た殺戮や破壊の度重なるイメージは村瀬さんが見せたイメージなのよ。そしてあなたは瞑想装置となり、人間存在の美しい心に則り、アガティスの石ころを蹴ったのよ」
僕は論駁する。
「でも俺にはその記憶が無い。覚えがまるで無いぞ!」
成美ちゃんが言う。
「複数としての単数存在として、あなたはその中の複数部分を欠如して、瞑想装置である自覚無しに人間存在の憤怒のままにアガティスの石ころを瞑想装置として蹴ったのよ。でもね、心配する事は無いのよ」
僕は苛立ち喚いた。
「心配するなだと、それはどういう意味だ?」
成美ちゃんが答える。
「瞑想装置の美しい破壊は、無化された無達の新たなる創成に結びついているのよ。だからここは不条理で矛盾している話しなのだけれども、よく聞いてね。あなたの母さんは死ぬと同時に単数としての複数存在として大宇宙に無数に創成再生されたのよ。そしてあなたの隣にはその複数としての単数存在であるあなたの母さんの分身である無も、無数に寄り添い、再生の時を待っているのよ。だからこそ瞑想装置の美しい破壊は、創成という現象概念を支える概念でもあるのよ」
僕は訝った。
「意味が分からないぞ。無数に再生された母さんの傍には無数に再生された俺もいるのか。それは俺なのか、俺ではないのか、どちらなのだ?!」
成美ちゃんが答えた。
「あなたは瞑想装置になるのよ。だから残念ながら、厳密に言えばそれはあなたでは無いわ。複数としての単数存在の中の人間部分に過ぎないのよ。あなたは美しいだけの瞑想装置になるのだから」
僕は喚いた。
「人間でない存在に美しさなんか無い。ふざけるな!」
成美ちゃんが答える。
「瞑想装置は、確かに人間存在ではない無機質な存在なのだけれども、人間存在から派生した美しい心の結晶体なのよ」




