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瞑想世界215
友と殺し合う事を歎いている暇は無いと、僕は思った。
馬乗りされ、首を絞められている逆境を、僕は悶えながら巴投げをして、切り抜けた。
立ち上がった田村が悪魔のごとく声で笑った後、再び逃げ出した。
殺さなければ殺されてしまう状況の中、僕は田村を殺す事を決意し、通信瞑想を遮断した。
戦況を見詰める第三者の眼は、あくまでも主観的でしかなく、田村の存在を索敵する事は出来ない。
雑木林の中、僕は息を調えつつ、腹這いになり前進する
カオスの坩堝は人間のいない静寂の世界でもある。
耳を澄ませば、風がそよぐ音は聞こえるが、他には何も聞こえない世界。
先手必勝の倣いの中、物音を立てた方に勝ち目は無い。
力は向こうが上だと見た方が、己の奢り高ぶりを排し、勝機を掴める可能性が高まる。
身体の動きを止めて、僕は耳を澄ました。
友と殺し合う状況を歎いている暇は無い。
殺さなければ殺されてしまう事のみを頭に描き、僕は息を吐き出した。




