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瞑想世界213
僕は慟哭しながら田村を殺した田村に襲い掛かった。
友情が邪魔をして殴れない。
防戦するだけで、僕はどうしても田村を殴れない。
それを良い事に悪鬼のごとく田村が矢継ぎ早に攻撃を仕掛けて来る。
その情景を見詰めているもう一人の僕が、通信瞑想で田村に助言を求める。
「どうしたらいいんだ、田村?」
田村が応えた。
「友情が試されているんだ。応戦しろ」
「お前を殴ってもいいのか?」
「いい。応戦しろ。倒れている俺を守ってくれ」
「分かった」
通信瞑想が終わると同時に僕は田村に殴りかかった。
すると悪鬼のごとく田村の顔付きが急に柔和になり、頭を下げて哀願する。
「止めてくれ。俺達は友達じゃないか」
混乱し、僕が攻め手を休めた隙を突き、悪鬼のごとく田村が、眼にも止まらぬ早さで、倒れれいる田村に馬乗りになり、拳を作って渾身の力で止めを刺した。
倒れている田村がえび反りになり、うめき声を上げながら痙攣しつつ絶命した。
その光景を目の当たりにして、僕は慟哭しながら、田村を殺した田村に襲い掛かった。




