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瞑想世界209
田村何処にいると、僕は語りかけた。
応答が有った。
戦場からの通信瞑想だ。
その通信瞑想が実体化し、僕をカオスの坩堝にほうり込む。
槍が甲冑を着ている武士を串刺しにする。
僕は風になってその凄惨な光景を見詰めている。
この通信瞑想を送って来た張本人の村瀬の気配は感じるのだが、実体を特定出来ない。
僕は田村に語りかけた。
「田村、どこにいる」
田村からの答えは無い。
時代を遡り、僕は血で血を洗う残忍な戦場を目の当たりにしている。
それは村瀬の破壊衝動が喚起する残忍な光景の連鎖だ。
村瀬のアガティスの石ころを蹴る破壊衝動は、振幅となって時空間を超え、全宇宙に拡散しているのだ。
刀が眼球を刺し、そのままえぐり出され、眼球が潰れる様を、僕は凝視している。
風になっている僕はそんな無残な光景から眼を逸らす事が出来ない。
その苦痛に風たる僕は絶叫し、押し戻されるように部屋に舞い戻った。
早鐘のように鳴る鼓動を抑える為に、息を調え、脂汗を拭って僕はもう一度田村に語りかけた。
「田村何処にいる?」




