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瞑想世界204
田村が絶叫を上げた。
坂道を登り切ったところで、僕は一度立ち止まり、上がった息を調える。
それを見計らうように田村が言った。
「灯台の回りをぐるりと一度回ってくれ」
言葉の意味が分からず僕は尋ねた。
「何故そんな事をするんだ?」
脱力して行く声で田村が言った。
「まじないだ。それをするとジャンプが成功すると感じるんだ」
僕は頷いた。
「分かった。お前の言う通りにするよ」
田村をおんぶし直し再び歩き出した直後、風に乗って成美ちゃんの金切り声が聞こえて来た。
僕は尋ねた。
「あの声は本物か?」
田村が答える。
「いや、あれは多分騙し絵だ。早く灯台を回り、ジャンプしよう」
「分かった」
僕が返事した直後、田村が絶叫を上げた。
僕は堪らず田村を庇うように下ろし、驚愕の視線を向けて喚いた。
「どうした?!」
田村の太股に鋭利な刃物で切られたような傷が出来、鮮血がほとばしり出ている。
激痛に田村が顔をしかめ怒鳴った。
「かまいたちだ!」




