瞑想世界2
基礎的な瞑想術を伝授した後、手荒な真似をしてでも、異なる世界に二人を連れて行くと田村は言った。
僕は尋ねた。
「村瀬は何故異なる世界に旅立ったんだ?」
田村が答える。
「多分お前のアガティスの石ころを異なる世界に探しに行ったと思うんだ」
田村も瞑想術は村瀬に劣らない達人の域に達しているので、僕は田村の曖昧な言い方を訝り、尋ね返した。
「随分と曖昧じゃないか、田村。お前も遠隔瞑想で村瀬の考えている事が手に取るように分かる筈だろう。違うのか?」
田村が目を細め険しい顔付きをしてから答えた。
「いや、村瀬の心が音信を絶っているんだ。だから村瀬が大体どこの地点にいるかは分かるが、村瀬の心は読めなくなっているのさ」
僕は再び質問した。
「村瀬は自分で心を閉ざしたのか?」
田村が首を振り答えた。
「いや、分からない。それが外的な要因によるものなのか、内的な要因のものなのかは俺には分からない」
「俺の実存としての石ころは何故異なる世界にあるのだ?」
田村が憂いを湛えて瞼を伏せ、言った。
「それも俺には分からないのだ。ただ村瀬はお前を助ける為に異なる世界に旅立ったのは間違いないんだ」
僕は引き攣るように一声笑い言った。
「俺の石ころは異なる世界でも、誰かに蹴られるものなのか。その蹴る生き物は一体どんな奴なんだ?」
「それも俺には分からない。ただ俺達は村瀬を助けに異なる世界に行かなければならないのは間違いない事実だと思うんだ」
僕は嘆息してから言った。
「成実ちゃん、村瀬が消息を絶って心配しているだろう?」
成実ちゃんという子は村瀬の恋人であり、田村は当然と言った感じで頷き答えた。
「ああ、やつれる程心配している」
僕は息をつき、ライムサワーを一気に飲み干してから言った。
「しかし俺はお前らと違ってクンダリーニヨガなんて出来ないし。どうやって異なる世界に村瀬を助けに行くんだ?」
田村が答えた。
「基礎的な瞑想術を俺が伝授してから、後は手荒な真似をしてでも連れて行くつもりだ」
僕は眉をひそめ尋ねた。
「成実ちゃんも連れて行くのか?」
田村が頷き答えた。
「そのつもりだ」