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瞑想世界192
でも永遠は無いのさと、村瀬が言った。
夜の公園。
僕は成美ちゃんとなり、村瀬に寄り添いベンチに腰掛けている。
村瀬が言う。
「いい映画だったね。でも最後の別れのシーンで、愛が永遠になったというくだりは頂けないと思うよ」
僕たる成美ちゃんが答える。
「そうかしら、あのストーリーでは、あの別れのシーンが永遠を作ったと思うわ」
吹くそよ風の中に田村のしっかりとしろという囁き声が含まれているのだが、成美ちゃんたる僕はそれを無視しており、村瀬の耳にはその声は届かない。
村瀬が言う。
「別れは別れであり、永遠の別れなど無いと思うけれどな」
成美ちゃんが答える。
「あの別れのシーンが永遠なのよ」
村瀬が微笑み言った。
「愛も忘却の対象ならば、永遠なんて有り得ないさ」
成美ちゃんが歎く。
「悲しい言葉を言わないで…」
風の中、田村の声がしっかりとしろと僕を励まし、僕は困惑した声でどうしたらいいと問い返して行くのだが、その囁き声を吹き消すように成美ちゃんが言った。
「私は村瀬さんとずっと一緒にいたいのよ」
村瀬が成美ちゃんの肩を抱き答える。
「それは僕も一緒だよ。でも永遠は無いのさ」




