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瞑想世界191
村瀬さん愛しているわと、僕は叫んだ。
逃げて行く村瀬。
それを追いかける成美ちゃんの心は、狂おしい慕情に包まれている。
その慕情が邪魔者を殺すという殺意に変わり、僕は田村を殺しに掛かる。
田村を追いかけているのか、村瀬を追いかけているのか己自身分からなくなる状況の中で、村瀬を慕う気持ちと、田村を殺そうとする気持ちが目まぐるしく交錯する。
叫び声を上げ、田村に追い縋ろうとするが、灯台の方角に走る田村の足に、僕の足は追い付かない。
僕は立ち止まり、激情のままに舌を噛んで死のうとするが、その動作を起こせない。
その刹那、田村の拳が僕の頬を捉らえ、僕は殴り倒された。
田村が鬼のような形相をして喚く。
「しっかりしろ!」
僕は泣き笑いしながら叫んだ。
「村瀬さん、愛しているわ!」




