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瞑想世界184
村瀬の心は朝鮮人差別に対する呪いしか無いと言い切れるなと、田村は言った。
僕は言った。
「それでどうなんだ。瞑想装置たる村瀬に付け入る隙はありそうか?」
田村が答える。
「いや、朝鮮人差別に対する呪いをエネルギー源にしている村瀬の心に脆さは何も無いと言い切れるな。呪いこそが破壊には一番効率の良いエネルギー源と言えるわけだしな」
僕は尋ねる。
「しかし、在日四世に当たる村瀬は、一世と違い、そんなに朝鮮人差別は受けていないだろう。違うのか?」
田村が答える。
「いや、朝鮮人という語句の印象の悪さは、今朝鮮人差別が横行していた当時に戻っていると言って過言では無いからな。俺達の知らないところで、村瀬も相当差別され、泣いていた事は推察出来るわけだしな」
僕はコメントした。
「しかし、村瀬は韓国人であって朝鮮人では無いだろう?」
田村が切って捨てるように言った。
「そんなの同じさ。朝鮮人には変わりないしな」
僕はしみじみと言った。
「村瀬の心は朝鮮人差別に対する被害者意識しか無いという事か?」
田村が否定する。
「いや、朝鮮人差別に対する呪いしかないんだ」




