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瞑想世界183
絶望よりは希望を?
田村が尋ねて来た。
「どうだ、心の整理はついたか?」
僕は答えた。
「何もしないで漫然と死を待つよりは、やはり俺は自分を守る為、家族との絆を守る為に闘いたいというのが、結論だ」
田村が言った。
「俺も同じだ。俺達はまだ若いし、脆い絆という愛の形に依存していても、それが生きる力となっている限り、その意気地を以って未来を切り開くしかないというのが俺の結論だ」
恭しく頷き僕は続ける。
「隷属、絶望に平伏して死を待つ為に生きているわけではないからな。俺はこれからの人生を力強く生き抜いて、結婚して所帯だって持ちたいし、子をなし、自分の家族を守る事も経験したいし、絆に依存した脆弱な喜怒哀楽だろうが何だろうが、泣き笑いして人生を貫きたいというのが、俺の本音かな」
田村が尋ねて来る。
「愚かしいのが分かっていても、捨てるには勿体ない人生という事だな?」
僕は頷き言った。
「そうだ」
田村が続ける。
「馬鹿な人生である事が分かっていても、絶望よりは希望を見出だし、生き抜いて行きたいという事だな?」
僕は頷き答えた。
「その通りだ」




