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瞑想世界174
止めろ、止めるんだ、成美ちゃんと、僕は叫んだ。
成美ちゃんの金切り声が耳をつんざく。
暗闇の中、僕はもう一度喚いた。
「成美ちゃん、帰ろう!」
二階に昇ったつもりが一階にいるエッシャーの階段を踏み外し、それがため息混じりの涙となって、暗黒のページをめくり、空中にぶら下がりながら頬杖をついている。
心の暗黒を頬杖をついて泣いている成美ちゃんの哀しみに、僕は寄り添い言った。
「成美ちゃん、帰ろう」
その声を潰す真空の宇宙空間。
それを額に貼付けるように村瀬がうそぶく。
「お前の一番大切な絆を打ち砕いてやる。それをだせ!」
僕は激しく首を振り喚いた。
「村瀬、貴様はそれを知っているのに、何故しらばっくれる!」
村瀬の声が成美ちゃんになり言った。
「そんなの知らないわ。あなたの一番大切な絆を断ち切ってやるわ!」
僕は暗がりに吸い込まれるのを覚悟で叫んだ。
「止めろ!止めるんだ、成美ちゃん!」




