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瞑想世界171
やれるものならばやってみなさいと、成美ちゃんが言った。
成美ちゃんが田村に尋ねた。
「あなた方が、私を人間社会に戻す事は、私という瞑想装置の退化に繋がる事であり、私が忌み嫌う生理的現象や、脆弱な生死の概念に逆戻りさせる事を意味するのだが、それでもあなた方は私を死なせる為に救出したいと言うのか?」
田村が言った。
「この地は言わば死んだ者の冥界であり、我々は若くまだまだ人間社会で、様々な意味での経験値を積み、学習する必要性を俺は感じているからな。その若さを君にも当て嵌め、救出し、村瀬よりももっと素晴らしい男に出会い、素晴らしい恋愛をして貰う為に、俺は君を救出しようと考えているのだ」
成美ちゃんが答える。
「それを余計なお節介として、私が拒んでも、あなたは私を救出し、退化させるつもりなのか?」
田村が断言する。
「そうだ」
成美ちゃんが微笑み言った。
「やれるものならば、やってみなさい」




