瞑想世界17
絶叫し、僕はジャンプした。
下を見ると、どうしても恐怖感が募る。
全身の震えが止まらない。
だが間を開けず、ジャンプしなければ位相の口が閉ざされてしまう。
僕は下を見ないようにして、自分の気持ちを奮い起こし、震える両手でロープを掴み、ぶら下がった。
だが突き上げる恐怖に手を離すことが出来ない。
手筈通り、頭に右回転するりんごのチャクラをイメージしようとするのだが、恐怖感がそれを妨げてイメージ出来ない。
恐れおののきながら僕は震え、声を限りに叫んだ。
「母さん!」
次の瞬間、僕は両手を離し、落下した。
錐揉みするように風を切る音が恐怖感を増大させ、僕は絶叫を上げた。
絶叫を上げながら涙を流し、僕は一回転して、頭から落ちて行く。
迫り来る岩場に頭が激突しようとする情景が、網膜に焼き付くように明瞭に見える。
僕はもう一度、断末魔の叫び声を上げた。
岩に頭が激突し、激烈な痛みに、僕の頭はスイカのように潰れ、身体がバラバラになって行くのに、相反して、なくなった耳許に音が聞こえる。
右回転するりんごのチャクラの音だ。
そしてばらばらになった僕の身体の肉片を、田村が無造作に拾い上げ、投げ捨てるのを、僕は右回転するチャクラの音になって見詰めている。
人事のように第三者の音になり見詰めている。
そして田村に放り投げられた僕は、岩場の上で、青いビー玉になり、そのビー玉が細胞分裂、突然変異を起こして、僕の肉体は復活し、僕はすくっと立ち上がった。
恐怖は失せ、痛みもなく、僕の肉体が岩場の上に立っているのを、右回転するりんごのチャクラの音で、僕は見詰めている。




