瞑想世界167
瞑想装置が主体なのですからと、成美ちゃんが断言する。
田村が言う。
「人間尺度で物を申すなと言うが、俺達が今こうして話していられるのも、人間の理性が働いているからに他ならないからではないか。瞑想装置となったらこの理性さえ働かなくなり、言わば残忍な破壊性だけとなり、論争さえ出来なくなるのではないか?」
成美ちゃんが否定する。
「いえ、理性は人間存在のものだけではないのです。それが証拠に村瀬さんは瞑想装置の完成体でも論争をものにしているのも又事実であり、理性が人間だけのものであると言うのも、人間存在の驕り高ぶりに過ぎません」
田村が反論する。
「理性を持っている存在は無軌道な破壊など行使しない筈ではないか?」
成美ちゃんが反論を重ねる。
「その物言いも人間尺度のものなのです。瞑想装置が理性を持ちながら破壊衝動に突き動かされる行為も、こちらの世界に在っては、立派な理性ある行いと断言出来るのです。こちらの世界では人間存在が主体ではなく、あくまでも瞑想装置が主体なのですから」
田村が言う。
「だが瞑想装置と言えども、人間の進化形ではないか?」
成美ちゃんが言い切る。
「人間存在からの進化形ということにも、瞑想装置は何の価値も置いてはいないのです。人間存在であった事に価値など見出だしてはいないのです」




