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瞑想世界162
他者依存の絆や愛を排する事が愛?
田村が言った。
「絆にしか愛を見いだせない人間存在は愚かしいという事か?」
成美ちゃんが答える。
「愚かしいという感覚さえも失せたものね。異相に在って絆を失い寂しさに暮れ、不安や孤独感に苛まれていたら、直ぐに自己崩壊してしまうわ。ここで生きて行く為には虚無の中に愛を見いだすしかないのよ」
田村が反論する。
「不安や孤独感の中に愛を見いだせないのが人間存在ではないか?」
成美ちゃんが答える。
「慣れの問題ね。それは異相の法則ではないのよ。言うならば個の実存を他者に委ねた甘えよね」
田村が言った。
「無の中に愛を見出だす行いとは、村瀬のように破壊を創成となす残忍さを愛とするこじつけか。残忍性や破壊衝動の中には、どうあっても愛が見出だせないのが、人間存在ではないか?」
成美ちゃんが答える。
「人間存在への執着から逸脱する事が、当たり前になれば、あらゆる概念の甘えを排した崩壊の後に新たなる愛の概念の芽生えは生じるじゃない。私はそう思うわ」




