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瞑想世界160
愚の骨頂だと思うわと、成美ちゃんは言った。
田村が言う。
「複合的な流れの無い単一の時間相には生死という概念はなく、畢竟永劫性はあるわけだ。だが無の状況には単一の時空間という概念さえなく、そこに心が捉らえる感覚感情は皆無であり、それが無の証左ならば、無は無でしかなく、その永遠遡航が続くだけだ」
成美ちゃんが反論する。
「無の永遠遡航状態が史上の幸福なのよ。そこに永遠が冠されていれば幸福なのよ。それは捉らえ方の問題でしょう」
田村が反論を重ねる。
「無に感情を冠して、そこに幸福を感じるのは、逆ユートピア論としては面白いと思うがな。俺は無という概念に幸せは見出だせないというのが正直な感想だ」
成美ちゃんが言い放つ。
「もう私達は三次元的な生き物ではないのよ。だから無の中に幸せをも見出だせるのよ。三次元的な価値観を持ち込む方が愚の骨頂だと私は思うわ」




