瞑想世界16
恐怖にかられながら僕達は次々とジャンプして行く。
僕達三人は覚束ない足取りで吊橋のほぼ中央まで移動した。
強い風に煽られ吹き飛ばされそうになるのを、僕は震える手でロープを掴み、何とか抑え込んでいる。
遥か下にある岩場で、寄せた波が岩に当たり砕け、白い飛沫を上げているのが見える。
それを見下ろし、成実ちゃんが震える声で一言言った。
「怖い」
田村が深呼吸した後、震える声で言った。
「俺が先にジャンプするから、成実ちゃんを手筈通り落として、一番最後にお前がジャンプしてくれ。頼むぞ」
僕は動揺を隠せず激しく震えながら目に涙を溜めて、頷き言った。
「分かった」
「よし、行くぞ!」
田村が恐怖を押し殺すように、何度となく深呼吸をした後、瞬きを止めた目を見開き、僕を凝視してから、ロープに両手でぶら下がり、呆気なく手を離した。
田村の身体が空中で一回転し、頭から速度を上げて落下して行き、岩場に激突した瞬間、白い波飛沫に紛れ、消え失せた。
僕はその光景を見て、ぼんやりと田村は海になったのだと考えたのだが、次の瞬間僕はかぶりを激しく振り、その妄想を打ち消してから、成実ちゃんに向かって叫んだ。
「成実ちゃん、行くよ!」
成実ちゃんが又喚いた。
「怖い!」
僕はもう一度叫んだ。
「成実ちゃん、俺には成実ちゃんを落とすことは出来ない。自分でロープに掴まり、ジャンプしてくれ!」
成実ちゃんが泣き出し、嗚咽しながらロープを両手で掴み、金切り声を上げた後落下した。
岩場に吸い込まれるように成実ちゃんの身体が消え失せたのを見て、今度は僕は成実ちゃんが波になったのだと、ぼんやり考えた。




