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瞑想世界159
無いと、田村が答えた。
田村が言った。
「村瀬に愛や友情は無い。あるのは破壊衝動だけだ。そんな事も分からないのか。成美ちゃん?」
成美ちゃんが答える。
「あの人の破壊衝動は創成の為の破壊衝動なのよ。新たなるユートピアに私を誘い、私達二人は永遠の幸福を手に入れるのよ」
僕は喚いた。
「そんな事誰が言ったのだ?!」
「村瀬さんよ。私は村瀬さんの心が読めるのよ」
田村が言った。
「そんなの村瀬の罠だ」
成美ちゃんが怪訝な顔付きをして、言う。
「罠?あの人が私に罠を仕掛けて何をするの?」
田村が言い切る。
「絶対の死に誘うのだ」
成美ちゃんが不敵に微笑み言った。
「私はその絶対の死の中で、村瀬さんと未来永劫幸せになるのよ」
田村が否定する。
「絶対の死は無だ。無には幸せなんか無い。心も無い状態が無ではないか!」
成美ちゃんが言い放つ。
「あなたは絶対の死を迎えた経験があるの?」
田村が答えた。
「無い」




