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瞑想世界158
私の最愛の人なのだからと、成美ちゃんが言った。
林道の奥、成美ちゃんがいた。
瞑想装置ではない穏やかな成美ちゃんだ。
僕は成美ちゃんに呼びかけた。
「成美ちゃん、一緒に帰ろう?!」
成美ちゃんが答える。
「帰る、何処に帰るの。ここは生理的な欲求が失せた永遠の場所じゃない。寂しいのを我慢すれば、素晴らしい場所じゃない?」
僕は怒鳴った。
「寂しいのだろう。ならば俺達と一緒に帰ろう!」
成美ちゃんがはっきりと言う。
「私は村瀬さんと一緒に帰ります」
田村が口を挟んだ。
「村瀬は何処にいるんだ?」
成美ちゃんが悲しげに答える。
「何処にもいないわ。でも村瀬さんは救世主になって私を待っていてくれるの。だから私は帰らないわ」
僕は喚いた。
「村瀬のどこが救世主なんだ。あいつは単なる破壊神ではないか。あいつに会えば殺されてしまうだけだ。成美ちゃん、帰ろう!」
成美ちゃんが言った。
「あの人を愚弄しないで。あの人は私の最愛の人なのだから」




