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瞑想世界153
永遠に届かない可能性論だと思うと、僕は言った。
田村が言った。
「それはもう三次元的な意味での生命体という概念は当て嵌まらない存在だな。だからお前は俺達が肉体を持った未完成の瞑想装置で、畢竟多次元宇宙の中で、欠如した形を与えられたと言うか、強いられ、俺達が必然的に記憶喪失になったと言いたいのか?」
僕は頷き言った。
「多次元宇宙の中の、記憶を喪失させるワームホールに落ち込んだのが、今の目の前に広がる世界だと俺は思うんだ」
田村が無機質に言った。
「村瀬がいて、成美ちゃんもいて、お前や俺も実在する、この現在進行している現象が多次元宇宙に穿たれたワームホールの騙し絵だとお前は言うのか?」
僕は頷き言った。
「そうだ。人間存在に真理を見せない為の、ブラインドと言うか、振りだしに戻す意味での目隠しだと思うんだ」
田村が言った。
「そんなブラインドが在ったら、人間存在はいつまで経っても真理には辿り着かないではないか?」
僕は答えた。
「そうだな。全て神秘の茅の外、永遠に届かない可能性論でしかないと思う」




