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瞑想世界15
突き上げる恐怖に震えながら、僕らは吊橋の上まで移動した。
空はどんよりと曇っていて、今にも雨になりそうな気配だ。
太陽が見えれば、目に紺碧に映るであろう海の色は澱み、不気味に黒ずんでいるように見える。
灯台の手前の売店にも売り子はおらず、寒々しく見える。
灯台を見上げる地点まで移動して田村が足を止め、僕と成実ちゃんはそれに倣った。
リアス式の入り組んだ海岸地帯。
灯台から正面向こう側の岸壁までを繋ぐ形で、吊橋が象られ、吹き上げる海風に揺られて、鈍い金属の擦れ合う軋み音を、間断なく立てている。
僕はその音を聞いて、膝がわななくように小刻みに震え出すのを感じつつ、底知れない恐怖をごまかす為に田村に質問をした。
「あちらの世界で分かっている事は他には無いのか?」
突き上げて来る恐怖に唇を震わせながら田村が答えた。
「分からない分だけ、底知れぬ恐怖があるだけだ。よし、吊橋の上まで移動しよう」
僕は震えを押し殺す為に深呼吸をして、同じように小刻みに震え出している成実ちゃんと足並みを揃えつつ田村に従い歩き出した。




