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瞑想世界149
お前は田村なのかと、僕は尋ねた。
単数としての複数。時間の同一性による感性撹拌剥奪。スノボー上級者の村瀬と成美ちゃんの微笑み。
そんな語句が頭に浮かびつつ僕は自分の部屋から田村に電話をかけた。
「田村、お前の方に違和感は無いのか?」
田村が尋ねる。
「何も無いが、お前には違和感があるのか?」
僕はしばしの間を置き言った。
「何かこれから冬を迎えるというのが変だし。村瀬と成美ちゃんが妙に仲良すぎるし。時間の同一性は人間の忘却性に比例してあると思うんだ。何か忘れてはいけない事を忘却してしまったような違和感があるんだ」
田村が言った。
「お前、二人の仲にやきもち妬いて、冗談抜きに次元の狭間に迷い込んだ言い方をしているぞ。一体どうしたのだ?」
僕は答えた。
「時間の同一性が次元の狭間に悪戯でも穴を空ければ、記憶障害は起きると俺は思うんだ」
田村が言った。
「それはどういう意味だ?」
僕は息をつき尋ねた。
「お前は田村なのか?」




