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瞑想世界148
記憶が原点に回帰して行く。
違和感を感じながらも、僕は村瀬に対して親しみを顕す。
「今度のシーズンは雪の量が少ないというのは本当なのか?」
村瀬が成美ちゃんを横目で見遣り言った。
「平野部は避けて、山奥のゲレンデに行けば積雪量は問題無いと思うんだ」
村瀬と成美ちゃんはスノボーの名人であり、僕と田村の師匠筋に当たる。
田村が楽しげに話をする。
「お前ら二人は上級者だからな、上に行けば積雪量は問題無いけれど、俺達初心者のゲレンデはしょぼい雪しか降っていないのではないか?」
これから冬に向かおうとする、その季節感に違和感を感じつつ、僕は言った。
「俺、上級者のゲレンデで滑ったら死んじまうよ。冗談言うなよ」
僕を包むように三人が笑い、成美ちゃんが言った。
「大丈夫よ、私と村瀬さんでフォローするから」
田村が村瀬を指差し言った。
「こいつのフォローは突き落とす事じゃないか」
それを聞いて、村瀬が愉快そうに大口を開いて笑った。




