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瞑想世界143
何も感じないと、田村は言った。
発祥地である海浜公園に僕と田村は降り立った。
成美ちゃんへの通信瞑想を施しながら、並んで歩いている田村に僕は言った。
「ここに成美ちゃんがいても、それが成美ちゃんの本体だと信じる事は出来まい?」
田村が答える。
「逆に考えれば、何百億もの分身を保持し、自在に動き回っているのは、瞑想装置の完成体たる村瀬だけだと考えられるだろう。そこから類推すれば、成美ちゃんの本体はここにいる可能性が高いと思うんだ」
僕は頷き言った。
「そうか、俺達も瞑想装置の完成体ではないから、保持している分身も僅少か、いない状態なので、村瀬からすると特定し易く、攻撃し易いわけだな」
「そうなる」
僕は喜び勇んで言った。
「どうだ田村、成美ちゃんの気配を感じるか?」
田村が首を振り、言った。
「いや、何も感じない。お前はどうだ?」
僕は答えた。
「いや、何も感じない」




