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瞑想世界139
自己崩壊してしまうぞと、田村は言った。
僕は再度尋ねた。
「ならば尋ねる。お前が田村である証明を、幼い頃の記憶を披露してみてくれ」
田村が答える。
「俺は幼い頃、たんぼの水面を見詰めていて、無性に飛び込みたくなり、飛び込み、出れなくなった記憶がある」
僕は反論した。
「しかし、そんなメモリー回路の細部に渡って、村瀬は通信瞑想を駆使して読み取るのだろう。違うのか?」
田村が答えた。
「いや、それは無理だ。そこまで他人に対する細部に渡る通信瞑想は知覚不能だろう。と言うか、こんなアイデンティティーの発露を信用出来なくなった、お前の猜疑心を除去しないと、お前は孤独と不安にかられ、自己崩壊してしまうぞ。それこそ村瀬の思う壷ではないか?」
僕は頷き言った。
「分かった。少し己の心を整理してみる。考える間をくれないか?」
田村が言った。
「分かった。村瀬に妨害されないように、常に青いビー玉想起してくれ」
僕は答えた。
「分かった」




