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瞑想世界137
我思う故に我ではない、その矛盾点、確執を明瞭にしたいわけだなと、田村は言った。
僕は猜疑心を顕にしつつ言った。
「本当に田村なんだな?」
「田村だ」
僕は改めて尋ねた。
「ならば田村、カオスの坩堝に有って、俺が俺である事の証明方法を教えてくれないか?」
田村が答えた。
「この闘いは自分との闘いでもあるのだ。自分自身の邪悪性に殺されてしまう前に、自分を律する闘いなんだ」
僕は反論した。
「違うぞ、田村。俺が知りたいのは、俺が俺自身である事の確認方法を尋ねているのだ。それはつまりアイデンティティーの再確認でもあるのだ」
田村が再度答えた。
「それは簡単な哲学だ。我思う故に我有りではないか」
僕は喚いた。
「いや、我思うのが我でない、己なのだが、己自身ではない酷似した分身、複合体としての単体の、矛盾を知覚出来ない場合を想定して俺は尋ねているのだ」
間を置き田村が通信瞑想を施す。
「つまり我思う故に我ではない、その確執矛盾点を、その境界線を明瞭にしたいわけだな?」
僕は頷き言った。
「その通りだ」




