瞑想世界127
だからアガティスの石ころは無限大なのさと、村瀬は言った。
村瀬が言う。
「今、俺達はお互いの姿を肉眼で見ずに話をしているわけだ。そしてここの場所がアガティスの石ころの内部である事も直感で感じ取り、それを信じているわけなのだが、実際問題、ここが石ころの内部なのが外部なのかの、客観的な確定は無いわけだ。つまりこの実態感のなさが、そのままアガティスの石ころの実態そのものであるならば、その実態感のなさ故に、実態感の無い俺達はあくびひとつしただけで、逆説としての実態を作ってしまい、石ころを蹴る行いをしてしまうという推論も成り立つわけじゃないか」
田村が反論する。
「実態感の無い者のあくびは実態感はあるまい。そんなの詭弁だ」
村瀬がせせら笑う。
「いや、異なる異相の中で、実態感が無いものは、音もなく平行移動して実態感をなすのさ。だから我々は生きていられるではないか?」
田村が質問する。
「存在論の中で、アガティスの石ころは生と死の中間形態をなすから、その実態感の無い分、逆説として多次元宇宙に不可知な実行力を持ち、破滅を誘うという論理か?」
村瀬が頷いた。
「ピンポン、その通りだ。不可知な分だけ、そのエネルギーは量り知れないという論理だ」
田村が言った。
「しかし、その理論にも客観的な証明はなされないというか、証明不可能ではないか?」
村瀬が頷き言った。
「だからアガティスの石ころは無限大なのさ」




