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瞑想世界123
それが救いなのさと、村瀬は言った。
爆裂を免れ、アガティスの石ころが静かに宇宙空間を漂っている。
アガティスの石ころが星を見詰めると、星は爆発して行く。
恒星爆発は他の星を巻き込み、まばゆいばかりのプラズマ光線を発する。
音の無い恒星爆発を見詰めながら、村瀬たるアガティスの石ころは哄笑する。
アガティスの石ころの中で会議が開かれる。
出席者は僕、田村、村瀬、成美ちゃんだ。
先陣を村瀬が切る。
「アガティスの石ころは全ての生命の起源なのだ」
田村が反論する。
「アガティスの石ころが、例えば人知れない路傍に在ったとして、それを蹴られたら、全宇宙は破滅するのか?」
村瀬が答えた。
「その通りだ」
僕は強く否定した。
「そんなのは嘘だ。そんなのが真理な筈が無い!」
村瀬がうそぶく。
「その石ころを蹴る破滅が逆ユートピアの唯々なのだ」
成美ちゃんが泣きながら言った。
「私が石ころを蹴り、宇宙が破滅してしまったら、私は村瀬さんを愛する事は出来なくなるのですか?」
村瀬が冷笑し答えた。
「それが救いなのさ」




