瞑想世界12
死ぬも生きるも賭け。道はそれしか無いんだと、田村は言った。
「痛い、痛い、痛い!」
ひっくり返って、目を押さえ、のた打ち回っている僕に、田村がおもむろに立ち上がって、右手の平を追い掛けるように両目にかざし、その柔らかく優しい癒しに、激烈な痛みが嘘のように和らいで行くのを僕は感じた。
胡座をし直し、僕は田村に向かって頭を下げ、礼を述べた。
「どうも有り難う」
田村が労うように僕に向かって言う。
「続けられるか?」」
僕は頷き返事した。
「大丈夫だ。仕切り直そう。しかしこんな混沌とも言える瞑想世界の中で、村瀬は生きていられるのか、どうなんだ、田村?」
「音信を断っている以上、生きていると明快に言う事は無理だが、ある地点に村瀬の生命の息吹も感じる事も間違いない事実なんだ。村瀬の心は読む事は出来ないが、村瀬の生命の躍動を俺は感じるんだ」
村瀬の事を思い、僕は涙ぐむのを手の甲で拭いながら言った。
「その地点とは何処なんだ」
田村が答える。
「この場所から五十キロ圏内にある海浜公園だ」
「海浜公園?」
田村が頷いた。
「そうだ。その海浜公園にある吊橋から飛び降りて、我々は位相転位して行くんだ」
僕は呆気に取られながら尋ね返した。
「おい、ちょっと待ってくれよ。吊橋から飛び降りるって、確実に死んでしまうじゃないか?」
田村が無表情のまま答えた。
「それしか方法は無いんだ。死ぬも生きるも賭け、道はそれしかないんだ」




