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瞑想世界117

狂ったカオス宇宙の静寂?

田村の声が引き攣る。




「早く捕まえろ。逃げるぞ!」





逃げる成美ちゃんに追い縋る田村の背中が、村瀬となり、分身が飛び出して来て、僕に襲いかかった。





僕は村瀬を殴るつもりが、僕自身の影を殴り、吹き飛ぶ。





痛みがない筈なのに、激烈なる痛みを感じ、僕は絶叫した。





カオスの坩堝の中、僕の自我は崩壊寸前となっている。





自分を殺す為の自分がいて、自分を慈しみ鼓舞する自分もいる。





複数としての単数の自我を意気地で保つのがやっとの状態だ。





邪悪なる僕は、僕の内側にいる無数の分身を殺したがっているのと同時に慈しんでいる。







殺意と愛が混じり合い、僕の精神は崩壊寸前だ。





僕としての僕が成美ちゃんである村瀬を追い、その田村が僕を襲い、僕は田村たる僕に殴られ、のたうちまわるのだが、その光景をじっと凝視している僕もいる。




カオスの自我。





その光景は甘美なエクスタシーをもらたすのと同時に、不安と孤独の坩堝であり、悲しみに悦びながら涙を流している。





狂った宇宙だ。


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