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瞑想世界115
寂しくなんかないわ。死ねと、村瀬が言った。
広さと同時に狭さを持つ、騙し絵としての図形的惑星。
その住人たる村瀬は光速で移動し、移動しながらの伸縮を繰り返している。
不条理な非図形としての紙飛行機は、惑星そのものの矛盾した広さとしての狭さだ。
村瀬の食料は成美ちゃんの恋心だ。
好きだと言われ、それを拒絶する図形の伸縮は、伸び縮みを繰り返しながら、成美ちゃんの恋心を退ける。
愛していますという声に不可視の図形的伸縮は止まり、冷笑する。
恋の駆け引きの食料を喰らう村瀬はけたたましく伸縮しながら哄笑を繰り返す。
愛が伸び縮みただれて行く空間は、限りなく無色透明で寂しい。
僕は言った。
「村瀬、帰ろう!」
伸縮した冷笑を湛え、村瀬が田村の声で言った。
「俺の楽しみを奪うな」
僕は喚いた。
「村瀬、寂しくないのか?!」
村瀬が田村と村瀬に伸縮する声で言った。
「寂しくなんかないわ。死ね!」




