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瞑想世界113
赤いオーラのハンカチは笑っている。
ハンカチが振られる駅のプラットフォーム。
村瀬の赤いオーラが別れの儀式を忌み嫌い、そのハンカチに潜り込み引き裂こうとしている昼下がり。
プラットフォームは人でごった返し、別れの儀式の花盛り。
僕は汽車の警笛となり、村瀬を威嚇する。
」村瀬、止めろ!」
汽車がゆっくりと走り出して行く中、大勢の人がハンカチを激しく振る。
だが村瀬が潜り込んだハンカチはオーラさながら赤く染まり、別れを嫌うように振られないまま止まっている。
村瀬の赤いオーラが引き攣るように笑う。
皆さよならと口々に言うが、赤いオーラのハンカチは沈黙し持ち主不在のまま、空中に止まり動かない。
僕はもう一度警笛の呼び声で叫んだ。
「村瀬成美ちゃんを殺すな、止めろ!」
動かない赤いオーラのハンカチは、誰の眼にも止まらず、空中に止まり笑っている。
冷酷に笑っている。




