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瞑想世界107
騙し絵に騙されるなと、田村がが叫んだ。
田村の声が闇の数字になって行く。
数える事の出来ない闇の数字は、螺旋になった数字の針の矛盾を孕みながら、数えようとするそのもどかしさを湛え、僕に訴えかけて来る。
「これは騙し絵なんだ。数えては駄目なんだ。耳を澄まし、目を凝らせ!」
真っ暗な奈落を恐怖に目を見開きながら、僕は落下して行き、絶叫を上げる。
闇の数字の田村の声は、螺旋の針のもどかしさを湛えながら、そんな僕を励ます。
「大丈夫だ。下に着くぞ」
つま先が大地につき、僕の落下は止んだ。
迷路だ。
田村が言った。
「騙されるな。ここは既にカオスの坩堝なのだ。意思を強く保つしかない!」
僕は震える声で田村に訴えた。
「怖い。田村傍にいてくれ。怖くて、死にそうだ」
螺旋の数字の闇に閉ざされた、実体の無い田村の声が僕を励ます。
「怖がるな。怖がったら負けだぞ!」
僕は叫んだ。
「田村、お前は何処にいるのだ?!」
もどかしさを湛えた闇の田村の声が言った。
「お前の横にいる。騙し絵に騙されるな!」




