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瞑想世界106
僕は唐突に足を踏み外し、奈落の底に落ちて行った。
僕は言った。
「善悪にしたって、その地域、捉らえ方によって様々な様相を呈して来るわけだ。法律で規定したって、加害被害の相対性の問題もあるし、絶対というのは無いからな。瞑想装置にとっての慈悲は殺し、殺されるの中にしか見出だせないだろう。そんな推論も成り立つわけだ」
田村が答える。
「考え出したら切りが無い。今はとにかく村瀬に対する我々の友情の強さだと思う」
僕は慎重に歩を進めながら言った。
「カオスの坩堝の中で、我々の友情がキープ出来るかどうかが問題となるな」
田村が言い切った。
「意思の力を以って維持するしかない!」
その直後、僕は唐突に足を踏み外し、奈落の底に落ちて行った。




