オリエンテーリング始まる。
緑の多い場所に、私達が泊まる宿泊所があった。バスが着くと、皆そろって我先にとバスの外へ飛び出して行った。
「「ぅわー!綺麗ーー!!!!」」
外に出た皆は、第一声が同じだった。
真っ直ぐ前を見ると、山々が広がり、見晴らしのいい景色が私達の心を奪った。
大きく深呼吸し、目を閉じた。心のモヤモヤや不安が吹き飛び、全てがリセットされたように気持ちよくなった。
「……い。おーい……いろは?」
目を開けると、春彦が目の前にいた。「な、な、なに?!!」驚き過ぎて、声が裏返る。
「そんなに驚かなくてもよくね?…オリエンテーリング始まるから並べって。皆待ってるから、急げ。」
そう言って、私の手を取り走り出した。春彦は体育大会のリレー選手だ。手を引っ張られているから、自分のペースで走れず、足がもつれそうになる。
「いろはー!何してたんだよ?!もう、皆行っちゃったぞ!」
私と春彦が走って来たのを見て、大声で手を振りながら言った。
「え!まじ!?もう、皆行っちゃったの?」
素で驚いた私達二人に紅葉は冷静に答えた。
「じゃんけんで健太が負けたの。…勝った順に出発するって決めたから、一番最後になったってわけ。くれはとはる君が悪い
わけじゃないよ」
「なっ!お前。黙ってたらわからなかったじゃねぇか!」
健太の言葉を無視して、紅葉は私と春彦の手を取り「じゃ!行こっか!」と、笑顔で出発して行った。
「おい!待てよ!」
後ろで健太の声が聞こえる。
それが何故かおかしくって、三人で笑ってた。後から来た健太は、なんで笑っているのかわかんない。という顔をしてた。