でも……
移動教室当日。
朝4時半に起こされたせいか、目をこすりながら集合場所に向かっていた。途中。五、六人の知り合いに会った。
健太、紅葉、春彦、私の四人で駅に向かった。
「ふぁー。 ちょーねみー。」
「春彦は、朝からそればっかだよな〜」
「確かに〜」
健太の言葉に、私は相づちを打った。
「だって、四時半に起こされたんだぜ⁈ねみーに決まってんじゃん!」
「でも、今はもう五時半だよ?私は、目覚めたよ」
「俺、すんごく眠い!春彦より何十倍も!」
そう言いながら、健太が紅葉の方に一歩よった。今までなら普通に流せた行動なのに、胸がギュッと締め付けられるように痛んだ。
『この先、結構厳しいかもな…』
その後、五分程歩いたら駅がみえてきた。もう、皆集まっている。
私達は、小走りで向かった。
「おはよー」
「おはよー!」
皆と挨拶をすませると、先生が欠席確認を始めた。
「青木、青山、石井、加藤・・・・・」
たまに、先生の声が聞き取りにくい時があったけど、どうにか欠席確認を終えることができた。
バスの席は、私と紅葉、健太と春彦の席になっている。一応、心配は無い。
皆、バスに乗り込んだ。
「それでは、出発します。」
バスガイドさんのアナウンスで、バスが走り出した。
このバスの席に、私は違和感を覚えた。普通の席なら、バスの進行方向を皆が向いてるけど、なぜかこの席…いや…このバス全部の席がおかしい。
なぜなら、4人が向かい合う様に席がなっていたから…
皆がこの異変に気付いた頃、先生が立ち上がりドヤ顔で皆に伝えた。
「この席は、先生がバスガイドさんに頼んで、『特別』にやってもらった事だ。だから、絶対に『席を戻す』なんて事考えちゃいけないぞ!」
言いたい事だけ言って、先生は、席に着いてしまった。皆、『えー!』と不満気に言うのかと思ってたら、
「やったー!」
とか、
「先生ナイス!」
という、賛成の言葉しかでてこなかった。私だって、前ならこんな言葉を言っていただろう。でも、今となっては、ほんの数人の反対の言葉に同意する。
バスは、原宿の人混みに紛れたかのように騒がしくなっていた。
『あーあ。あんまり楽しい思い出にならなそう。』
そう思って、小さくため息をついた。
「いろは⁈なーにため息ついてんだよ!幸せ逃げるぞ?」
気が付くと、私の隣が紅葉から、健太に変わっていた。
「な…なんで健太が隣なの⁈」
「おいおい。そんなに俺の隣が嫌か?俺の隣に座りたい奴なんて、沢山いるんだぜ?幸運だと思っとけ。」
と言いながら、軽くデコピンした。
私は、昔から健太のこのデコピンが好きだった。
私以外の人には、誰もやらない。それは確信がある。皆に聞いても、誰1人としてやられた事がない。
『いいなぁ〜』ってみんなから言われた。
ずるい。
好きでもないくせに…
誤解するような事するんだもん。
そう。私の恋は、3日前に終わってる。自分では、そんな事、とっくに分かってる…
でも…