信じがたい言葉
私の名前は花上いろは。
私の通ってる中学校は、乃木山中学校だ。クラスは、1学年につき三クラス。小さめの学校だ。もうすぐ10月。2年生の教室は、移動教室の準備でバタバタしていた。
今日は、移動教室前日。移動教室に行く場所は、……えっと…何だっけ…ま..まぁ、とにかく自然が多い所だって先生が言ってた。
すごく楽しみだった。だって紅葉と健太と春彦と同じグループだから。ずっとそう思ってた。でも、…今はそう思えなくなっちゃった。
移動教室2日前。
「うわー、最悪。忘れ物するなんて。もう誰もいないよな」
私は、誰もいない廊下を走って、荷物を取りに行っていた。階段を駆け上がると、どこかから、男子数人の声がした。
「私の、クラス…?」
その時私は、なぜか足音を立てないように、ソロリソロリと歩いていった。
『あ。健太だ。』
そう思って私はドアに手を掛けた。
「お前は誰が好きなんだ?」
『え…?』
ドアに掛けていた手を戻し、私はしばらく男子の話を聞くことにした。
『ごめんなさいごめんなさい。私は盗み聞きします。』
「俺は紅葉が好きだ。」
「えーマジで⁈お前、いろはの事結構見てるから、いろはが好きなのかと思ってた!」
「いろはは仲の良い友達だよ。」
「……………………。」
『え…。この声は、健太…?』
私は忘れ物を取らずに、廊下を走った。上履きを履き替え学校をでた。
この時、家が学校に近いのは良かったと、改めて思った。
「ただいま」
家に着いた私は、階段をかけ上がり、ベットに倒れ込んだ。
「健太のバカーーーーーー!!!!!」
枕に顔を伏せて、私はそう叫んだ 。
そして声を上げて泣いた。幸い、家族はみんなどこかに出かけていて、家に私1人だったから、誰かが鳴き声は聞いて 駆けつける。なんてことはなかった。
だから余計に周りを気にせずに大きな声を出して、子供のように泣いた。
『俺は紅葉が好きだ。』
『いろはは仲の良い友達だよ。』
そんな言葉。聞きたくなかった…。
今までの言葉や、今までの優しさはきっと健太自身の性格だったんだ。私が特別だからとかそんな理由じゃなくて……
それに、健太の好きな人が紅葉なのがすごく嫌な感じがする。
たしかに、紅葉はすごく可愛いし、成績優秀で、男子から告白された事だって何回もある。私だって男子だったら、好きになっちゃうくらいだもん。でも、私は紅葉と真反対。分かってたけど…そんな事最初から分かってたけど…。