お化け。
「16番の人〜。どうぞ〜。」
しばらくすると、順番が回ってきた。
『あーぁ。…しょうがない。行くか!』
「はーい。今いきまーす。」
私と春彦は、手を繋いで暗い外へ出て行った。
(手を繋いでまわらなきゃいけないルールになっていたから。)
「暗いね。」
「うん。」
「なんか、ちょっと肌寒いね。」
「うん。」
「……虫が出てきたら怖いね。」
「うん。」
春彦が話しかけても私は うん。としか答えなかった。
ガサガサッ!
『?!!!』
「キャーッ!」
草むらの中からした音に、ビビって春彦にしがみついた。
「大丈夫だよ。野良猫の仕業だから。」
そう言ってなだめてくれた春彦が、なんだかかっこ良く見えた理由は、よくわからなかった。
しばらく進むと、生首の人形がおいてあった。「変なのー」わらってそういいながら、私達は通り過ぎていった。
「ねぇ。」
この声は…私じゃない。かといって、春彦の声でもない。
「だ、誰?!!」
後ろを振り向くと、白い服を着た長い髪の女が立っていた。
『ふっ。先生だな。白い服を着た長い髪の女って、ありきたりすぎるんだけど笑』
「こっちにおいで。」
長い髪の女は私達に おいでおいで と手招きしている。
誰が行くかよ。
そう思って、私は春彦の手を引っ張って早々にその場を去った。
その後、何事もなく肝試しが終わった。
「なにこれ。つまんなかった…」
私が不満気につぶやくと、春彦が
「確かに…笑。本物のお化けもでてこなかったしね。」
うん。うん。と頷き『肝試しが終わった人はこっち。』と書いてある方の部屋に入った。
「いーたん!めっちゃ怖かったね!華奈愛、びっくりしちゃった〜」
そう言って一番に駆け寄ってきたのぶりっ子で有名な華奈愛だった。正直、そんなに可愛くないし、性格がいいわけでもない。女子はもちろん皆嫌っているし、男子も大半が嫌っている。
かまわなきゃいい。
そう思っている人もいるかと思うが、あっちから近づいてくるのだ。華奈愛は好き嫌いが激しく、嫌いな人には一切近づかない。そして、悪口ばかり言う。けれども好きな人には、話し掛けたり、近づいてきたりする。
「いーたん?どぉしたの??」
この人に好かれたら終わりと思ってもいいかもしれない。
それほどなのだ。
(まぁ、この人の詳しいことはまた今度話すとして、)
「ん?なに?なんでもないよ。」
私なりのそっけない返事を返すが、気づいていないのか、ニッコリ笑って私の後をついてくる。
『助けて!』
近くにいた友達に、必死になってアイコンタクトで伝えるが、友達は私を哀れむような目で返すことしかしてくれなかった。
「ふー!ただいまぁー。」
肝試しから、健太と紅葉が帰って来た。
「いろは!話したい事があるから、ちょっといい?」
紅葉によばれて、私は華奈愛から逃げることが出来た。
小走りで紅葉のもとに行くと、紅葉は私の肩をポンポンッ。とかるく叩いた。
「ん?紅葉?」
「いゃあ。いろはも大変だなぁーって思って。華奈愛ちゃんに好かれちゃったから……」
「本当だよ…??ってことは、さっきは助けてくれたの??」
「そうだよ!今気づいたんかい。笑」
「ありがとう!!!本当にありがとう!!」
私は紅葉に抱きついた。
「いえいえ。…あ。そういえば、肝試しのときに出てきた白い服を着た男!あれは面白かったよねー!」
??
「え?男?」
「男だよ。笑 熊谷先生だもん。『熊谷先生!』って言ったら、笑って道教えてくれたし。」
え?