二人☆
目を覚ますと、どこかの部屋に居た。
『ここは…宿泊所?』
ゆっくり身体を起こし、目をパチパチさせた。
懐かしい夢を見た。小学五年生くらいの夏休みの時の出来事。健太の新しい一面を見た。……あの時が一番楽しかった。二人だけで出かけて、手を繋いで…
ポタ・・・
『あっ。涙が…』
急いで目をこする。
『今は、二人だけで出かけることも無くなったからなぁー。…また、二人だけでどっか行きたいな。』
「お。いろは、目ぇ覚めたな。…具合、大丈夫か?」
私が静かに頷くと、健太はニッコリ笑って「そっか。なら、良かった!」と言った。
「…ねぇ。健太?」
ん?と、健太は振り返った。
「…今度さ、どっか出かけない?」
「あぁ。いいよ。四人で行くと……」
「四人じゃなくて、二人だけがいい!!」
健太の言葉を遮って、私は怒鳴る様にして言った。
健太は、最初は驚いた顔していたものの、ニッコリと笑って、 「うん、いいよ。」と、答えてくれた。
「ほ、本当?!」
「俺が嘘つくとでも?」
「思ってる!笑」
「あ。このっ。いろは!」
「嘘だよー。絶対行こうね!」
『やった!二人でお出かけだ!』
「健太君?病室では、静かにね…あら!花上さん。起きたのね?具合はどう?」
保健の先生が様子を見に部屋に来た。
私はこの先生が嫌いだ。
別に、特別な理由はないけど、差別がある気がしてしょうがない。嫌な人になると、顔の表情が曇る。皆は、「可愛い先生だし、いいじゃん」とか言ってる。でも、男子のことは名前呼びで、女子は苗字で呼ぶっていうのが気に食わない。
「花上さん?調子が良くなったら、皆の部屋に戻っていいからね?」
それだけ言うと、また、どこかに行ってしまった。
『何しに来たんだよ。せっかくいい感じのムードだったのに…』
「なぁ、いろは。二人で出かける所なんだけど…どこがいい?」
「え?…えーっと、遊園地…とか?」
すると、健太はアハハっと言って笑った。
「やっぱり!いろはなら、遊園地だと思った!」
笑い終わると、立ち上がって、私に近づいてきた。
『え?え?な、なに?!』
ワシャワシャ
?!!!
「健太?!やめ、やめてって。」
頭をグシャグシャにされた私は、他の人からみたら、貞子のようになっているとおもう。
「じゃあな。また明日!」
グシャグシャにされた髪を直していると、健太はニッコリ笑って部屋から出て行った。
一人で居ると、やっぱりさみしい。さっきまで、健太がいたから気付かなかった。この部屋は、思ったより薄暗く、広い空間だった。
怖くなって、部屋からでると、紅葉と春彦が居た。
「な、なにやってんの?」
驚いて、声が裏返ったが、しっかり言葉をはっきり言った。
「あんた達二人。いい感じじゃん?二人だけで出かけるなんて…。そうだ!はる君。私達も、一緒にどっか行こっか!!」
「え?俺達も?!」
「…私じゃ嫌?」
紅葉は、上目遣いで春彦に聞いた。春彦が紅葉の事を好きなのは、とっくに知ってる。
好きな人に上目遣いなんてされたらひとたまりもない。
「嫌なわけないじゃんか!一緒に行こう!」
「やった!嬉しい♡」
いい感じのムードを壊さないように、そっと、その場を離れた。
春彦、良かったね!!!
私は、皆の居る部屋に、急いで走って行った。