夢と現実
健太と紅葉が学校の体育館の裏で2人で話していた。あんまり上手く聞き取れなかったけど、この言葉だけははっきりと聞こえた。
「俺。紅葉が好きだ!」
その言葉を聞いて、紅葉は戸惑ったようだったが、やがてこう答えた。
「私も健太が好きだよ」
私はいてもたってもいられず、その場から逃げ出した。背後から誰かが私を呼ぶ声がしたが私は走り続けた…
『お願い!!夢なら早く覚めて……!!!』
「...い…いろ…!…いろ..は……いろは!!………!」
ザーーーーーーーーーー
雑音のような音がこだましていた。
「大丈夫か?!おい!いろは!!!」
ゆっくり目を開けると、目の前には健太が心配そうに私を見ていた。
『夢……だった…良かった…』
「良かった!俺、誰だか分かるか?」
「…健太…なんでここにいるの…?私は…崖から落ちて………」
「そうだよ。お前は崖から落ちたけど、この木の枝に引っかかって助かったんだ。」
そう言いながら、健太は私を抱きしめた。
え!?
「ちょっ?!健太!?ね、ねえ!……」
「心臓止まるかとおもったんだぞ!……本当に良かった……!」
離れて!!なんて言えなかった。
心配してくれたこと、抱きしめてくれた時の腕の力強さ。昔、私を助けてくれたときの腕の力とは違った。
「…俺、昔から、いろはが好きだったんだ…付き合って?」
「……は?!」
「ごめん。やっぱり付き合えない…よな。」
「いやいや。それより、今、このタイミングで言うか?って思って……!」
だんだん視界がぼやけてきた。
『あぁ。そうか。私はきっと、都合のいい夢を見てるんだ。……だって、健太の好きな人は紅葉だもんね…』
すーーっと、目の前が真っ暗になっていったーーーーー・・・・・