別れ1
冬休みが始まった。
補習1日目を終え、自分の部屋で勉強していると、ノックの音がした。
「よぅ、お疲れ」
ジョーだった。
「おー入れよ。陣中見舞いに来てくれたんだ?」
「…まあな、これ食えよ」
包みの中には、チョコレートケーキが1切れ入っていた。
俺の分だけ?一緒に食べないのか?ジョーを見ると、彼は少し思いつめたような顔をしている。
「俺さ、急いで地球に帰らないといけないんだ。急遽、明後日結婚式を挙げる事になって」
えっ…?!息を呑んだ俺の目を見て、彼は更に続けた。
「こんな大事な時に…俺は、親友のお前と一緒にいたかったんだけどな…」
目を伏せて力無く笑うジョー。
前から決まっていた事でも、いざ結婚するとなると、緊張と不安でいっぱいだろう…。
それに急に式を挙げるなんて、家族に何かあったんじゃないのか…?
でもまだ俺は何も言えずにいた。親友だって、生まれて初めて言われたんだ。
俺はジョーにどれだけ助けられてきた事だろう。
いつも一緒にいてくれて…。
今日も、自分の事で大変で時間も無いのに、わざわざ俺に報告に来てくれて、俺を気遣ってケーキまで買いに行ってくれて。
メグの事で俺が頼んだ時も、ジョーは助けてくれた。なのに俺は…。
自分が恥ずかしかった。彼を信じきれていなかった事が。
「…じゃあ、行くね。来年戻るから、またよろしくな」
ジョーがドアを開けた。
「あ、あの!」
やっと言葉が出た。
「ごめん!初めからお前を信じて言うべきだったんだ、メグは友達で、彼女じゃないんだ!」
ジョーは唖然としている。
そりゃそうだ。
ジョーは結婚の報告をしたのに、突然こんな事言われたんだから。
しかも、俺がメグに気があるってカミングアウトしてる事にもなる。
変だよな?俺だって頭では分かってるんだ。でも…。
と、ジョーが微笑んだ。
「…ありがとな、ワタル」
きっと、ジョーは俺の気持ちを解ってくれた…そう思う。
それが、ジョーとMSで会った最後だった。