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大切なもの4

気がつくと、明に支えられて無事だったメグが、真っ赤な顔で俺を睨んでいた。

周りの人々も食い入るように俺を見ている。

数秒だが気まずい時間が流れた後、静寂はざわめきへと変わった。

今度は明が、ジョーと一緒に俺に詰め寄ってきた。この二人は俺が居ない間に仲良くなっていたらしい。

「何ヶ月だぁぁ?!」

出ましたこの質問。

見ず知らずの人々も含め、物凄い数の好機の目に晒された俺は、ボソッと答えた。

「…3ヶ月目、だけど」

結婚してから出来たんだぞ!ずっと二人きりだったけど、手を出さなかったんだぞ!…でも結婚した日に出来たんだけど…。やっぱり恥ずかしいよな…。

と、心の中で威張ってみたり、落ち込んでみたり。俺の表情は目まぐるしく変わっているに違いない。

「そうかぁ…じゃあ、えっと…」

と言うと、ジョーと明は俺そっちのけでコソコソと喋り出した。

「お前ら何考えてるんだー!!」

だから計算するなっての!

しかし、メディアに囲まれた中で発表してしまった以上、彼等がネタにするのは必至で。

俺はどう取り繕う事も出来ず、苦笑するのみだった…。

困惑した俺を察したかのように、ジョーが近づいてくると、両腕で俺とメグの肩を抱いた。

「ワタル、メグ。本当におめでとう!」

「地球への帰還、結婚、その上に赤ちゃん。3つもお祝いが重なるなんて、喜ばしいじゃないか!」

明が呼びかけると、その場は一気にお祝いムードに包まれた。

 

やっぱり彼等は最高の友達だ。あの後、彼等が俺の居ない間どうしていたのか、聞いた。

ジョーの結婚が急に決まったのは、彼のお父さんが倒れたからだったと言う。しかしジョーやメアリーをはじめ、家族の賢明な看病のお陰で、今は元気に暮らしているそうだ。

明の方は、俺の事で責任を取ってSSPを辞めていた。しかし彼はSSPにとってかなり有用な存在だったようで、俺達の無事が確認されると元の職に呼び戻されたらしい。

二人とも大変だったんだ。だけど、そんな様子も見せずに、俺の事を温かく迎えてくれたんだ…。

 

あれから半年が過ぎて、再び、街にイルミネーションが瞬く季節がやってきた。

しかし、それが見られる商店街は、家から少し離れている。

だけど、去年とは違い、イルミネーションが無くても、ここには季節を感じる。

冷たい風。白い息。シャリシャリと音を立てる雪道。

その全てが、今の俺には気持ち良い。

俺は両手に提げた買い物袋を車に入れると、ポケットからメモを取り出した。

メモには買うべき品の名前が並んでいる。但し、その全てが平仮名だけで書かれている。

最近少し時間が取れるようになって、メグは日本語を勉強し始めたのだ。書き慣れなくて文字が大きいために、メモは何枚にも及んでいる。

一枚一枚読み直して、買い忘れが無い事を確認する。

…うん。大丈夫だな。俺はもう一度、その愛しい文字達を一つ一つ眺めた後、メモをポケットに入れた。

それから車を走らせて家に向かった。

今日はジョー夫妻と明が遊びに来るのだ。

60話…!やっとここまで来ました。みなさま、応援本当にありがとうございました。残りはあと1話です。何とか今年中に間に合いそうです。では、最後の更新までよろしくお願いします。

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