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出発6

顔を離した時、消えていたはずの恥ずかしさが、一気に舞い戻ってきた。

唇に残る柔らかな温もり。それがとてつもないスピードの鼓動を巻き起こす。自分の耳にも聞こえそうなくらいに。

有り得ないくらいに顔が熱くて。顔から火が出そうで。

けれど…、俺はメグから目を反らす事が出来なかった。

肩で息をしながら、俺はメグを見つめていた。

そこにはもう、言葉は無い。

聞こえるのは、二人の息遣いだけ。

メグの瞳から、一筋の涙が零れた。その瞳は爛々と輝き、昔のような暗い影はどこにも見当たらなかった。

この輝きを、曇らせないために。俺はこれから頑張るんだ…。

 

彼女を、抱き寄せた。彼女が俺の背中に手を回してくると、思わず、彼女を抱く腕に力を込めていた。

心臓がドキドキしてるのが、メグにも聞こえてしまっているだろう…。恥ずかしくて堪らない。

だけど…、いいや。もう夫婦なんだから…。

腕の中にいる彼女に、もう一度キスをした。

 

日付が変わる寸前に、記入し終えた婚姻届を機械の中に入れた。オンラインで、世界中の戸籍管理の端末にデータが送られる。

俺達は今、永遠の愛を全世界に宣言したのだ。

 

もはや俺達の間には1mmの距離も無かった。

今、二人の心は重なり合い、融け合っていた。

鼓動、呼吸、体温、香り…、全てが、一つだった。

もう、別々のものではなく…二度と離れる事の無いものなのだと―そう知った。

 

ふと目が覚めた。やっと眠りについてから…まだ2時間くらいだろうか。時計を見ると、あと3時間は眠る時間があった。

よく休まなければ。今日から地球への旅が始まるのだ。

俺のすぐ横で、メグは安らかな寝息を立てていた。

俺は彼女の手をそっと握ると、再び目を閉じた。

それが、MSで二人きりで過ごした最後の夜だった。

更新が遅れがちながら、長々と続いてきましたが、ここまでお付き合い下さった皆さま、本当にありがとうございました。

次回より最終章が始まります。二人の恋はひとまずゴールを迎えましたが、まだ地球への旅のゴールが控えています。弥はそのゴールで、何を見るのでしょうか。

最後までお付き合い下されば嬉しく思います。

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