出発5
するとメグは、照れたように笑った。
「…ワタルの言う通りね。私、本当に素直じゃなかった。ケレンスキーさんにも言われたわ」
「シューラに?」
「うん。ワタルに告白された時、実は嬉しかったはずなのに、いざとなると戸惑って、素直になる勇気が出せなくて…。彼が、その事に気づかせてくれたのよ」
俺がボブに、素直になれとガツンと言われたように、メグもシューラに同じ事言われてたんだな…。
―初めから、俺とボブは分かってたんだからね?―
シューラの言葉を思い出した。
最初から…、二人とも分かってたんだ。ただ俺達が素直じゃなかっただけで…。
この二人に、どんなに世話をかけた事だろう。これからは間違いを繰り返さないようにしよう。
いつまでも素直に生きる事を、心に誓った。
そうしてメグと話しながら、やがて辿り着いた場所は…、MSの市役所だった。
「ここ、この後エネルギーをカットするから、今のうちに…」
そう言って、メグは俯いた。
そうだ。ここに、大切な用事があったのだ。俺から言うべき事だったのに悪い事したな…。
俺はすぐに無人のカウンターから専用の紙を取り出してくると、そこにサインをした。そして、それをメグに差し出した。
「今の俺には何も無い。こんな俺で…本当に良いのか?」
最後にもう一度、尋ねた。
するとメグは、笑って俺の手から用紙をスッと奪った。そして、その紙にメグの筆跡が加えられていった。
「これからは何があっても、二人で助け合っていくんでしょう?私とワタルは、夫婦なんだから」
メグは、用紙に向かったまま、ペンを休める事もなくさらりと言ってのけた…。
「これからずっと、よろしくお願いします!」
俺はメグに頭を下げた。
「こちらこそ」
メグもペコリと頭を下げた後、微笑みながら俺を見つめた。
その瞳に…吸い込まれた。
―愛しい…―
その感情だけが、俺の全てを支配した。眠気も疲れも、緊張や恥じらいさえも飛んで…