子供心と大人心4
…だけど、あの時追い掛けなければ、メグとは二度と会えなかっただろう。
メグはこの世からいなくなっていたはずなのだから…。
『すぐに会わなきゃならない人がいるんです!』
あの時、俺は必死だった。
『いっそ殺して下さい。もし行かせてくれないなら』
死んでも、絶対メグにもう一度会いたいって必死で…。
そう、子供みたいに…必死になって、自分の意志を通して。
するとあの人が、宮根さんが、自分が責任を取ると言って、俺を行かせてくれたんだ…。
『必ず、自分に悔いの無いようにやって来い。いいな!』
記憶の中で、彼の言葉が胸を突いた。
その言葉が、さっきのボブの言葉と重なり、頭の中を駆け巡る。
―自分に悔いの無いように―
俺ははっとした。俺は『子供』の自分を抑えて、自分に嘘をついていた。
『大人』になる事を履き違えて、言い訳をして、逃げていたんだ。
もちろん成長しなければならない事はある。自分を抑える事も必要だ。
しかし少なくとも、大人になる事は、自分に嘘をつく事ではないはず。
今まで自分に正直に行動してきた事に、悔いは無い。
そしてこれからも、悔いを残してはならない。
もう一度、メグに逢わなければ。
そして、自分の想いを正直に伝えよう。
玉砕するかもしれない。それでもいい。
愛してるのだから。
彼女が幸せになってくれれば、それでいいんだ。
見返りを求めていたなんて、俺は何て幼稚だったんだろう。
陽はどんどん高く昇っていく。
俺は赤い土の上を、太陽を背に走っていた。メグに逢うために。
君が俺を愛してくれなくても。
俺は友達として君を支え続けるよ。今までと変わる事なく。
―どうか、もう一度メグに逢えますように―
そう祈った。あの時と同じように。
メグのいる宇宙船に入り、宇宙服を脱ぐ。
今更になって現れた俺に、彼女は会ってくれるのだろうか。彼女を見捨てて、先に帰ろうとまでした、大人げない俺に。
でも、今出来る限りの事をするしかない。悔いの無いように…!
決意を新たに、呼吸を整えてから、更に中へと歩を進めた。