表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/61

子供心と大人心2

「そんな、勝手に決めるなよ!」

かーっと、頬が火照るのが分かった。

「ずっとワタルを見てて思うんだ…」

そう言ってボブは遠くを見た。

「お前はすごく立派な大人だ。若いのに落ち着いて行動して、仲間もリーダーも元気にしてくれた。とてもまだ学生とは思えない。だけど…」

ボブは俺の顔に視線を移すと、一息ついてから更に続けた。

「“先生”でないお前は、まるで子供のようだ」

『子供』…その言葉に苛立ちが膨れ上がった。

それはずっと背中にのしかかっていた。

何とか大人になろうともがいてきた。…それなのに。

「…馬鹿にしないでくれる?!もう20歳なのに子供だなんて!」

「止めないのか、ホワイトさんを」

間髪いれずにすっと言われて、俺は黙ってしまった。

俺はもう一度考えた。

冷静に、客観的に。

やはり、答えは変わらない。

「…メグの決めた事なんだ。俺の口出しする事じゃない」

ボブは俺を見つめると、微笑んだ。

次の瞬間―

ボブが突然振り上げた掌が、乾いた音を部屋に響かせた。

パシッ……

この部屋の全てが止まった。空気の流れも、時間さえも。

俺はゆっくりと左頬に手を当てた。確実に熱くなっているのが伝わった。

痺れが消えて、徐々に左頬の感覚が戻ると共に、俺の思考も戻ってきた。

肌の表面を走り抜けた痛みが、脳のスイッチを入れた。

「何すんだよ!」

俺は怒りのままに声を荒げた。

「何大人ぶってるんだ!!」

すぐにボブの怒声が俺を圧倒した。

「子供なら子供らしく素直になったらどうなんだ?!」

「悪かったね、ひねてて」

俺はまともに言い返す事も出来ず、顔を背けた。

―そうだよ、俺は嫉妬してたんだ、カデットさんに。全て完璧で包容力の有るあの人に…。

だけど、どうしようもないじゃないか今更…。

「ホワイトさんを愛してるんだろう?だったら追い掛けたらいいじゃないか!」

「いいんだ、もう…」

いたたまれなくなって、俺は席を立った。

ボブを残して部屋を去り、ポートに向かう。

「畜生…!!」

声にならない叫び。

やりきれない思い。

…ボブの言う通りだ。素直に追い掛ける事も、祝福する事も出来ない…

『子供』と『大人』の間、宙ブラリンの自分…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ