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トライアングル7

それから数日間、俺達は燃料を運ぶ作業に汗を流した。

また、ボブと共にクルー達の健康を保つためにも尽力した。

ボブも含めて、俺以外のメンバーは皆宇宙航行のプロだ。

だが、俺の専門分野である医学について学ぼうとするボブの謙虚な姿勢は、俺の孤独感を取り去ってくれた。

またその忙しい合間を縫って、MSのエネルギー計算を行った。

動力系統に回せる分と、帰路のために取っておかなければならない分を正確に割り出さなければ、無事に還る事は出来ない。

本当はボブに任された仕事だし、彼一人でも出来るはずだった。

だがボブは、俺が解る範囲で色々な事を教えてくれて、素人の俺にも計算作業に参加させてくれたのだ。

他のクルー達と一緒に行動しているシューラも、MSに立ち寄る度に必ず声をかけてくれて、俺の計算を手伝ってくれていた。

思えばシューラの目もとは、ジョーに似ていた。

体格は似ても似つかないが。一目見た時に感じた彼への親しみはきっと、そのせいだ。

ジョーはどうしているだろうか…。

急に決まった結婚。

式の日に側に居られなかったどころか、あれっきり会っていないのだ。

大学で、周りに日本人が一人も居ない、そんな孤独感から俺を救ってくれたのもジョーだった。

彼の友情は、日本にいた時と何ら変わらない安らぎを与えてくれた。

そして仕事や勉強ばかりに必死になってきた俺に初めてできた、[本当の]友達だった。

早く会いたい…。地球に還ったら真っ先に会いに行こう。そう決めた。

作業が始まって5日目。

今日を含めて2日間でここでの作業は終了だ。

7日目にはMSを打ち上げる。そして次の日には地球へ出発するのだ。

早朝、まだ着替えも済まないうちに、シューラがやって来た。

彼だけ走って来たのか、息を切らしていた。

「ワタル、リーダーが倒れたんだ。意識もはっきりしなくて…。行ってあげてくれないか」

俺は慌てて診察器具をまとめると、カデットさんのもとへ急いだ。

宇宙船に入りエアロックを抜けると、通路でぼんやりしているメグがいた。

「メグ!カデットさんは大丈夫か?!」

声をかけるまで彼女は、俺が来たのに気づいていなかったのか、驚いたようにこちらを見た。

「…ごめん、今何て言った?」

それが、1ヶ月ぶりに彼女と交わした会話だった。

ずっと彼女が恋しくて、会いたくて、話したかった。

だが、もちろん今はそんな心境ではない。それどころではない。

「カデットさんのところへ案内してくれ」

メグに連れられてカデットさんの側に行くと、彼は既に昏睡状態に陥っていた。

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