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トライアングル4

俺はクルー達と一緒に、宇宙船の一室に入った。

そこは彼等が食事をとったり憩うためにある、リビングのような部屋だった。

しばらく待っていると、リーダーが現れた。

真っ先に俺のところに歩み寄ってきた。

「こんにちは、アンドレイ・カデットと申します。私達に協力してくれて本当にありがとう」

深みのある低音が、部屋中に共鳴した。

彼が差し延べた手を握る。俺の手を包みこむような、大きな手。

握手しながら、彼を見上げた。

大学でも俺より背の高い人ばかりだったので、慣れているはずなのだが、彼の体はとても大きく見えた。

背丈はジョーと似たようなものだが、肩幅の広さ、胸板の厚さのせいだろうか、俺は圧倒された。

彫りの深い顔。まさしく歴史的な絵画や彫刻に描かれる勇士のようで、美しかった。

彼は挨拶を終えると、クルー達の前に立った。

「私達は、この宇宙船に残っている燃料をMSに移し、最も効率的に利用して地球に向かう計画を、完成させた。8日後、地球へ向けて出発する」

拍手が沸き上がった。本当に間もなく地球に還れるんだ。

「それは、彼女がいたからこそ完成したのだ。宇宙航行の天才であり、MSを熟知している者でなければ不可能だった。では、彼女の方から計画を説明してもらおうと思う。注意して聴くように」

彼はそう言うと、一度部屋を出た。それからすぐに再びドアを開けた。

そこには、メグが立っていた。

カデットさんはメグを先に通すと、後から入ってドアを閉じた。

「SSP隊員、メグ・ホワイトさんだ」

紹介を受けたメグは、微笑みながら一礼した。再度、拍手が沸く。

メグは腕いっぱいに抱えた計算用紙を机に置くと、口を開いた。

「現在、ここに残るエネルギーは…」

彼女の唇から、あの澄んだ声が流れ出した。

しかしその内容は…俺には英語にも聴こえない…全く別の言語のようだった。

専門用語と数式の羅列。それは宇宙飛行士にしか理解できない言葉達。

俺は一人、取り残されていた。

目の前に居るメグはもはや、俺とは別の世界の人間だった。

話を終えると、彼女は部屋を出ていった。結局、一言も話しかける事は出来なかった。

カデットさんがクルー達に指示を与えると、彼等は宇宙船のあちこちに散っていった。

俺は一人、部屋に残されたまま呆然としていた。こんな所に居たって仕方がない。

俺は立ち上がって、エアロックに向かった。

宇宙服を着て、外に出た。MSへ向かって、歩く。

どこまでも続く赤い砂漠の上を…孤独に押し潰されそうになるのを、奥歯を噛み締めて堪えながら。

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